「年に一度、の二人」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

年に一度、の二人

永井 するみ:著

講談社/2007.3.6/1,575円


年に一度の二人

「僕は待っています。
必ず」来年の同じ日に、同じ場所で。
男と女は再会の約束をした。
一年後の再会を約束した男女の愛のかたち。
          <帯より>



香港のハッピーバレー競馬場で一年に一度会う、
男と女の話。


どちらか一方が、現れなければ、それで終わり。
ただ、それだけの関係。


別れには、連絡も釈明も必要ない。
逢いたくなくなれば、終わる。
それだけの関係。


「女はだれだけ縛れるか。
 男を。
 そして自分の愛を。」

という、裏表紙のコピーと装丁に惹かれて即、買った。



しかし、ちょっと肩透かし。


せつない遠距離恋愛の話かと思ったけど
せつなさ同盟としては、ちっとも
せつなさが伝わってこないし、
男女のラブというよりも、息子ラブのママ
という感じか……。


三編からなり、微妙にリンクしあっている中編集。

タイトルは全て「馬の名前」。


女は、医者の妻であり、乗馬をする息子の母だった。
好きな仕事であったインテリアコーディネーターの仕事を
パートでしている。
正社員のピンチヒッターで行った、香港で、
男と出会い、以後、年に一度会いに行く。


夫とはぎくしゃくしているが、そんなものだと思い、
他の男に抱かれたとしても罪悪感を抱かない女。

息子と留守の間、息子を預ける実母にのみ罪悪感を
感じるだけの女。


男はバツイチだが、独り身なので、女は男を縛れない。
だから、年に一度会うだけで、それ以上求めはしない。



異国の美しい風景を描写するように
恋愛の美しいところだけをすくいとっている感じ。
あまりにさらりとしすぎていて、
「愛」に体温が感じられない。


永井するみは、心理描写が鋭かったので期待していたが、
今回のはあまりにあっさりとしていて、
私には物足りなかったかな。


ドロドロしてなくて、きれいなのが好きな人には
いいかも。


深いところまで描かず、淡々としていて、
結論は読者に委ねているから、読者の
想像力はすごく刺激できるね。


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枷のある恋愛は、楽しいとこだけを見て、
互いに楽しめれば、イイトコどりで
いいのだろうけど、深く関われば関わるほど
つらさも寂しさも増えて来るのだろうな。



ハリネズミのジレンマのように
深く抱き合うほどに互いに無傷ではいられない。
だけど、求めあわずにはいられない。


そして、相手が苦しむのを見て、
自分の苦しさも倍増する。
そして、その苦しさに耐えかねて、
多くは破壊してしまう。


年に一度の関係だったら、一年365日のうち
一日だけその人のものになるだけでいいなら、
後は、その人が何をしていても気にしないし、
求めないでいれるのかな。

そうすれば、誰も傷つけず、
傷つかないのかもしれない。



99の苦しみがあっても、たった1つ
その人に逢えるということが最大の「幸せ」で
あれば、こういう関係はずっと続いていくのかもしれない。