「火災調査官」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

「火災調査官 スペシャル
    燃え残った真実編」
   鍋島雅治:原作/田中つかさ:画 
Gコミックス/日本文芸社/2007.8.10/500円


火災調査官
Gコミックス版。
コンビにで発売中。

船越栄一郎主演でドラマ化されていて
表紙には船越栄一郎の写真尽き。

ドラマは観ていないのだけど、
紅のイメージがぜんぜん違~うっ。
ドラマは、謎解きよりも人情ものになってるのかな。
今度見て、比較してみよう。




灰の中から真実を掘り起こす
奇跡のプロファイラー 紅蓮次郎

愛憎、恨み、衝動……
燃えた理由は何なのか?
火災現場に残されたわずかな手がかりから
その謎を解き明かす
            <帯より>



焼け跡を前にして、「炎」を感じることができる男。
そして、その炎から「真実」を探り出すという
火災調査官 紅蓮次郎が主人公のドラマ。

毎回、火災現場にかけつけ、その灰を見て、
心理学的見地、科学的見地から、事件の真相を
暴いていく。


破天荒で大胆で予測のつかない行動に出る
紅の冴えわたる推理力が毎回見もの。
いでたちもさることながら、やることなすこと
カッコよくて、憎いヤツ。

クールに分析し、真実を突き詰める姿を見せる紅は
罪は罪として突きつけるが、犯人や人への
やさしさに満ち溢れているところが魅力的。


その紅の部下である調査官 白井は
正義感あふれる男で、いいコンビ。
女心を鋭く解る紅とは対照的に女心がわかって
ない白井とのかけあいがとてもおもしろく、
一話に一度は笑わせてくれる。


そして、その二人に対立しつつも協力しあう
キャラとして登場するのが放火捜査専門の刑事。

一見、悪役キャラだが、紅を認めつつ
犯人逮捕にかけては執念をもつ男。

それぞれの個性が際立つ魅力的キャラの描き方も
おもしろいし、大変勉強になる。
そして、毎回登場する犯人の背負うドラマが
深く味わえる。


一話完結で、短い中でこんなにも深いドラマが
描けて、薀蓄と笑いも取り混ぜて、きちんと
オチや余韻がついていて、構成を学ぶのにも
もってこいであった。


この「燃え残った真実編」の中で、
好きだった話は「タイムカプセル」。
紅の母校での防災訓練の時、タイムカプセルが
堀りおこされる。
それを阻止するかのように起こる火災は
美人女教師によるもの。
彼女は過去の何を封印したかったのか。
そして、同時に紅の過去の秘密も見られる話。

女心のせつなさに泣ける。


「燃えないもの」という話も泣ける。
“金で買えないものはない”という拝金主義の社長が
火災現場に命がけでも取りに戻ろうとした
“金で買えないもの”とは……。


金で買えないかけがえの無いものへの想いや痛みが
じんと伝わってきてこれも泣ける話。
やっぱり、父娘愛には弱い私。


「燃えたシャッター」は父と息子もの。
戦場カメラマンの父の意思を受け継いでカメラマン
になった息子が火災現場の写真を撮る。
同じように人の悲しみに向けてシャッターを切るのに
父の写真は心を打つが、息子の写真はなぜ感動しないのかを
真実を暴きながら、紅が解いていく。


これはカメラのことに詳しいというのもあるが、
カメラや写真への愛も感じる話で、表現者を
目指すものとして、考えさせられる話だった。



火災調査官

「火災調査官 1」
  日本文芸社/H13.3.10/495円
これはオリジナル版。


前編、後編でじっくり一つの話を描いているので
より火災を取り巻く人たちの人間模様や心の影が
深く描かれている。
とにかく 紅はカッコイイ ヒーローの要素たっぷり。



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私も漫画原作のお仕事で「八百屋お七」の話を
書いたことがあるのだけど、その時、
放火する心理や動機をいろいろ調べた。

放火は最悪の行為であるが、それをしてしまうまで
追い詰められる人間の闇や愚かさは
限りなくあるものだろうと思う。


火災、一瞬にして全てが無くなってしまう。
でも、無くなってしまうことで
初めて見えてくるものや気づかされることが
多いのだと改めて思った。