「6時間後に君は死ぬ」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

私に読ませたいと、ある人からもらった本。

なぜ、この本なのか、この本のどこなのか、
なぜ私になのか、
読んでいくうちに、その謎が解けていく。


そして、それがわかった時、
私は思い切り涙していた。


もう、本の中の謎解きより、私自身が
謎解きをする主人公になってた。


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「6時間後に君は死ぬ」

  高野 和明:著
講談社/2007.5.11/1600円


六時間後に君

回りつづける運命の時計
未来を賭けた戦いが始まる!


稀代のストーリーテラーが放つ、
緊迫のカウントダウン・ミステリー



運命の岐路に迷う時、1人の予言者が現れる。
「6時間後に君は死ぬ」。
街で出会った見知らぬ青年に予言をされた美緒。
信じられるのは誰なのか。
「運命」を変えることはできるのか。

未来は決まってなんかいない 明日を信じて、進むだけ
               <帯より>


どの話にも未来予知ができるキーマンとなる男が
登場する連作短編集。


表題の一作目は
これをミステリーとして読のは、賛否両論別れるところ。
謎解きの部分があるので、詳しい筋は
書けないが、予想通りの展開にちよっと物足りなさが残る。

でも、このタイトルと帯のコピーには引き付けられる。


二作目は、「時の魔法使い」。
これがとってもよかった。

シナリオライターを目指しているプロットライター
の女性が主人公。


夢を追いつつ、現実の厳しさと戦う女性が少女時代の
自分と、ある短い時間だけ、生活を共にするという
ファンタジー。


9歳の「過去」の自分に恥じないように生きようとする
29歳の「現在」の主人公は、
過去を変えることができるという強烈な誘惑の前で、
戸惑う。


脚本家になりたいという夢はなかなか叶わないし、
みじめな想いもするけれど、心から笑える日が
来ると信じて、頑張ろうとする。


シナリオライターを目指している主人公に
自分を重ねたが、亡父への想いや生家が無くなった寂しさ
の描写の部分も私自身の体験と重なり、
途中で涙して読めなくなったほど。
こんなにもせつない想いが共感されるんだ。

この本を私にくれた人は、私がどんなことに
せつなさを感じるかが、解ってくれているんだと
思い、こみあげてくるものがあった。


第三話「恋をしてはいけない日」。
これもせつなくて らつなくて泣ける話。


一話目のように「恋をしてはいけない日」と予言された
女の子の話。
だけど、その日に限って恋をしてしまうという話。


恋に落ちるということ、本当に人を愛するというのは、
感覚的なものであり、相手の“見えないもの”に
惹かれていくんだなと思う。


第四話「ドールハウスのダンサー」は、
ダンサーを目指すもの同志でルームシェアをしている
女の子の話。


二話目と同じく、夢に向かって頑張っている女の子の
せつなさやくやしさ、後悔や挫折がすごくよく現れている。
女のダークな部分もよく観察して細かいなあと思う。

一見とってつけたような「ドールハウス」だが
映像が浮かぶほどに鮮烈。

後味はいいのだけど、私としては、違う結末にして
欲しかった。


第五話は「3時間後に僕は死ぬ」
予知能力者が自分の未来を見てしまう話。
一話目に出逢った二人が再会する。
ちっょとツッコミどころはあるけど、
うまくまとめてある。



ラストは「未来の日記帳」。
すごく短いけど、著者の言いたいことが全て
集約されている。

 

高野和明は、ストーリーテラーとして秀逸である上に
女性心理描写が巧みである。



「13階段」は男の描写だったが、
「KNの悲劇」や今回のこの本のような「女心」の
揺れなどが、きちんと描かれている。




随分前に読んだけど、女性描写が絶妙な作品。



★「K・Nの悲劇」
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10002279424.html