「キマイラの新しい城」 | 月灯りの舞

月灯りの舞

自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

「キマイラの新しい城」
殊能 将之:著

講談社ノベルス/2004.8.5/840円

kimaira

「私を殺した犯人は誰なんだ?」欧州の古城を移築して
作られたテーマパークの社長が、古城の領主の霊に取り
憑かれた!?750年前の事件の現場状況も容疑者も全て
社長の頭の中にしかない。
依頼を受けた石動戯作も中世の人間のふりをして謎に迫る。
さらに、現実にも殺人が!石動はふたつの事件を解明できるか。
                     <裏表紙より>



笑った、笑った。
「ハサミ男」以来、すっかりファンの殊能将之。
常に新たしい試みと仕掛けで、読者を楽しませてくれる。


今回はいっぱい笑わせてくれたし。

でも、中世ものでファンタジーが入ってるので、
ちょっとついていけないかもなあと思いつつ
読み始めたら、止まらない。
軽快な文章がおもしろい。

なんせ、殺された本人が「犯人を見つけてくれ」って
設定。しかも、肉体は現代の男なのに魂は750年前の男。
普通に考えたら、これってミステリじゃないじゃん。
リアリティなどあるわけないのだ。
本当に霊にとりつかれた男なのか、狂ったふりをしている
のかかが最初はわからないのだけど、だんだん
そんなことどうでもよくなってくるほど、リアリティを
おびてくる。
文章が上手いから一気に読ませる。

タイムスリップものとしての部分、750年前の男が見る
現代の描写がすごくおもしろい。
この男の視点で描いているとこは、ほんと大笑い。
バイクを馬だと思ったり、傘を剣と思ってたりとかね。
細かい描写やコネタ満載。
味覚とか感覚の違いもきちんと書いているので、
よりキャラが生きて見える。


巻末の参考文献の多さには、なるとほどなあとうなった。

密室殺人事件ではあるけど、本格ミステリと思って
読むとトリックにはがっくりきちゃうかも。
でも、謎解きあり、冒険ありで十分満足できる。
ちょっと最後は孤独な騎士の霊にほろりとさせられるし。
               (2005.03.12 読了分)