「倒錯の偶像」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

「倒錯の偶像
    -世紀末幻想としての女性悪」
  著者:ブラム・ダイクストラ
  訳者:富士川義之・藤巻明・松村伸一・
     北沢格・鵜飼信光
     1994.4/10,080円/パピルス

世界に氾濫する女性イメージの起源を
世紀末絵画のうちに読み解く。

一世紀前の上流階級の人々が抱いた危険な幻想で
あふれんばかりの書。
19世紀後半、男性が女性について何をどのように
考えるようになったかを絵画や写真を通して語っている。
 
従順の喜び/病弱崇拝/虚脱状態の女性/背骨の折れたニンフ/
治療的強姦の神話/月光と蝋の女性/進化と脳/同性愛と雄々しき超越の夢/
絡みつく蔓草と退化の危険/男性化女性と遺伝学/獣姦と蛇の快楽の専門化/
吸血鬼の変貌/黄金とバビロンの処女なる娼婦 etc.


シェイクスピアの不朽の名作「ハムレット」に登場する
オフェーリアの絵。
ハムレットに捨てられたと思いこんだオフェーリアは、
悲しみのあまり発狂して川に落ちて水死し浮かんだ
絵がある。
彼女は「愛ゆえに狂乱した自己犠牲的女性の鑑」
とし当時人気を博した。
死が彼女の恋人への献身的な思いを最も高く立証
したことになるという。
有名なミレイの絵だけでなくいろんな画家が
オフェーリアの死を描いている。

思うほどグロイものはなくどの絵も幻想的で
妖しい魅力をかもしだしている。
ただ、文章は難解で本が凶器になるほど分厚い。

(2004.10.6読了分)