「色男の研究」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

「色男の研究」
  ヨコタ 村上孝之:著
  角川選書/2007.1.31/1500円

色男の研究
近代以降、私たちは粋な「色男」の遊び方、
生き方を、あらかた忘れてしまっている。
そして、代わりに「恋愛」を覚えた。
この「恋愛」はだれにでもできる。
何の技量がなくてもできる。


民主的だが、ひとりよがりのものでもある。
人に分かってもらえなくてもいい、
そんな意識が「恋愛」の基本だ。

こんな「恋愛」を卒業するために「色男」の技を
ちょっと思い出すのも悪くない。
この本で模索しているのは、そのための手がかりである。
            <裏表紙より>


“色男”になるための いわゆる“モテ本”ではなく、
そもそも色男とはどんな男として示されて来たのかを探る。


古今東西の「色男」を文化史的視点で
研究者として、真面目に論じた本で
「サントリー学芸賞(社会・風俗部門)」受賞作らしい。


著者は大阪大 大学院助教授でもあり、
関西学院大学では、「色男とドン・ファンの比較研究」
という講義もされている方。


そんな著者が、あらゆる文献をひもとき、
歴史上どんな男がもてたのか、もてる男の条件とは、
モテるためのどんな努力がなされたかを探り、論じている。


色男が女にちやほやされるのは、
ちただお面がいいからという単純なことではなく、
「粋(すい)」であり、女の心をよく知り、
女が何をすれば喜ぶかがわかっている男とある。

それは、西鶴の「好色一代男」、当時の
遊びのバイブルである「色道大鏡」にも書かれている。


そして、どんな女とでも“寝てやれる”とある。
女であれば手当たりしだい、老いも若きも美女も醜女も、
セックスしてあげられる“優しさ”のある男だと。


そんな何人かの“色男”のエピソードが載っている。
例えば、在原業平は、99歳の老婆と同情心からセックスした。
それは業平が無双のセックスマシーンだというのではなく、
情愛の心に富む優しい男であったからだと。


「性愛」によって女性に恵みをもたせられる男が
色男であるというのもうなづけるが……。


このような“優しい”色男もいれば、
第六章「女たらしという職業---ヒモとジゴロ」では
女に貢がせる寄生的男や騙す色男の例があげられる。


文学作品からも「金色夜叉」「舞姫」などがあげられ、
“純愛”を捨て“経済的”なものに擦り寄る“男妾”な
男たちが論じられている。


第七章「媚薬・誘惑・虚偽」の項目も興味深い。
積極的に女を自分のモノにする色男の様子が
書かれている。
好きという感情がないのに性的行為に及ぶため
「惚れ薬」「媚薬」「睡眠術」などを使う男など。


他にも本来の「ダンディズム」についてや
「悪い男の魅力」「女たちの復讐」の章も
切り口が鋭く、興味深かった。


参考文献の数も多く、古今東西の小説や漫画から
あらゆる“色男”が登場しておもしろい。


彼らの色男っぷりや、粋な台詞、女への接し方など
それぞれ個性的であり、色男の幅も広い。

かなの読み応えたっぷりで資料的にも色男列伝として
いいかも。


★「マンガは欲望する」の著者でもある。
http://tsukiakarinomai.ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10015632672.html

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