「感動をつくれますか?」 | 月灯りの舞

月灯りの舞

自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

「感動をつくれますか?」
  久石 譲:著
  角川書店/2006.8./724円)


感動をつくれますか

モノづくりは感性に頼らない!

クリエイティブに生きたい人のために。
◆「ハウルの動く城」の曲づくりは、神が
  舞い降りた!
◆優れたプロとは、継続して自分の表現ができる人
◆第一印象には、感じたままがもっとも素直に現れる
                <帯より>



映画音楽の第一人者であり、作曲家の久石譲が
ものづくりについて初めて語った本。

「感性」や「創造」というものは言葉では語りにくい
ものであるが、著者は音楽家という観点から、
「感性」についてをなるべく言葉を介して語っている。


第一章「感性と向き合う」、
第二章「直観力を磨く」では、
感性についてやその磨き方についてを
著者自身の「作品」の作り方を通して
語っている。


ものづくりの核心は直感だが、そのバックボーンには
その人の過去の経験や知識、今までに見てきたものが
基盤となっているという。
だから、常に「質より量」で自分を広げ、
ストックを増やし、キャパシティを広げることが
大切だと。


偶然によって思いがけない幸運に巡り合うこと
という意味で使われる「セレンディピティ」という
言葉を大事にしているという著者。

常に確固たる自分はなく、自分の力も絶対的ではないと
言う著者は、自分に幸運をもたらしてくれるものを
引き寄せるのも直観力だと語る。


まあ、このあたりはちょっと自己啓発的な本みたいで
特に目新しいことはなかったのだけど、


第三章「映像と音楽の共存
というのは
さすが、音楽の専門家ということで
大変、勉強になる。

「映画音楽ができるまで」むというような
実践的な話や、コラボする監督によっての
映画づくりの違いやテンポ、こだわりなど
についての話は興味深い。


いろいろな映画を例にあげ、構成や、音楽が
どう関わっているかの分析もおもしろい。

悲しいシーンでは悲しい曲を流し、
もりあげるところはそれなりの音楽をつけるという
のはあえてしないという著者は「普通ならそこに音楽が
入る」というところから全て音楽をはずしたりするという。


第四章「音楽の不思議」では、
音楽は記憶をよびさますスイッチ」と、
音楽の効果をあげ、
「映画と音楽の構造の類似」などをあげて
さまざまな表現方法と音楽についての可能性や
幅広くとらえた音楽についてを語っている。


第五章「日本人とクリエイティビティ」では、
伝統楽器や世界の音楽、韓国映画などの比較を
しつつ日本の音楽性やプロデュースについてを
解説している。


常に何かを創造していたい、表現したいと
思っている私にとってはとても勉強になる本であった。

第一線で活躍されている著者ならではの自信、
プロとしての自負のようなものが伝わってきて、
説得力がある。

著者は最後に語る。


ものをつくることをやめることはないだろう。
生涯、創造者でありたい。“創造の泉”を自分の
内に持っていれば、書きたいものを書き続けられる