「デブになってしまった男の話」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

装丁がアルミ箔みたいな銀色で、まぶしく派手な本。
作者の経歴も変わっているが、この本は
作者の実体験を元にしているらしい。


「デブになってしまった男の話」
  鈴木 剛介:著
  求龍堂/2006.9.25/1200円

デブになてしまった男
人生を狂わせてくれる恋をひとつください。
コンプレックスと戦いながら生きていく
全ての男女に贈る、切なくも元気をくれる
恋愛小説!!   <帯より>



まあモテる大介。
美人で彼にベタ惚れの彼女がいて、
彼女公認のガールフレンドもたくさんいる。
女の子を落とすなんて、簡単だと豪語。



しかし、そんな彼が恋したのは、美人でモテるのに、
アインシュタインが理想で、恋愛なんてどうでもいい
タイプの直美。


直美を本気で愛しはじめた大介は、彼女とも別れ、
他の女の子たちとも遊ばなくなり、直美を追う。
しかし、あっけなくふられる。


ふられた大介は、「千人斬り」を目指すナンパな友達と
ナンパにあけくれるようになり、
「男はハンターだ」と女を落として、ヤルことだけに
燃え、セックスにもちこむことをゲームととらえる。



女を食い散らかし、女性の心をもてあそんできた大介に
「天罰」が下る。



前半は、そんなにおもしろい文体でもなく、
むしろ、「モテ講座」を語るマニュアル本みたいで
鼻についていたが、この「天罰」は爆笑してしまった。


そして、大介は重症を追って入院。

この入院中に、ストレスから食べまくった大介は
退院の時には立派な101キロの「デブ」になっていた。


このデブになってからの描写がおもしろい。

もう一緒にナンバはできないと友達に言われ、
どんどん卑屈になっていく大介。



愛という感情は、相手の人間のファクターの総合
によって形成される」という真実は本当で、
そのファクターにおいて容姿は最大のファクターだと
思っている大介にとって、一気に自分が“弱者
”に
なったことを悟る。



しかし、大介はまた恋をし、ボクシングジムに通ったり、
断食道場に通ったりして、「明るいデブ」を目指す。

そして、本当の愛にめぐり逢う。


昔話のように、悪いことをしたらこうなりますよと
訓示され、そこから何かを学んで、人は変わっていくと
またイイコトがありますよという典型的な構成。



前半は、あまりの大介のサイテーぶりに、
読むのをやめようかと思ったが、
その分後半のギッャプがおもしろいし、
テンポもよく、読後感がさわやかだった。