「インターネットは幸せにしたか?」 | 月灯りの舞

月灯りの舞

自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?
 情報化がもたらした「リスクヘッジ社会」の行方』
  森 健:著 
  アスペクト/1,680円/2005.9.8

インターネット

ネットって怖い! でも今さらやめられない!
だから私はパソコンの前で途方に暮れる……。
(香山リカ氏推薦!)
IT革命がもたらした「利便性」と引き換えに、
多くの「何か」を無意識のうちに失おうとしている。
それは「プライバシー」「自由」「民主主義」
「多様性」「主体性」……。
気鋭のジャーナリスがネット社会の光と影に迫った
ノンフィクション!
             <帯より>


講談社『WEB現代』に連載された『ITは人を幸せにするか』を
大幅に加筆した本書は、ネットワーク社会の光と影を浮き彫りにする
社会時評系ノンフィクション。

第一部「ネットワークが自由意志を制御する」では
どんなものでも配信可能という両刃の剣であるメール、
ネットを支配する検索エンジン グーグルの功罪、
ネットから生まれた参加型ジャーナリズム「ブログ」の
行方、加速するパーソナリゼーションとスモールワールド
についてを検証している。

まさに今、ネットにおいて自分が関わっていることの
全てが語られていた。
実際に自分が体験していることだけに著者の洞察と
今後の展開などの考察は興味深かった。


特に第一部の四章「ウェブの進化が民主主義を衰退させる」
では、会員制ソーシャル・ネット・ワーサイト(SNS)に
ついてはおもしろい。
『ミクシィ』や『オーカット』などのSNSの仕組みは
通称「スモールワールド」と言われ、ネットワーク科学
の対象事例となっている。


初対面の人間同士に共通の友人がいることがわかり、
お互いに世間の狭さを知るということがスモールワールド
問題であり、「友達の友達は皆友達」と近い。
このようなつながりがSNSではよく見受けられ、
ある程度の友達登録数があれば、サイト内の人と
何人かの人を経由しながらつながっていく。
“六人先まで友だちをたどれば世界中の人と結びつく”
という法則。

ブログのことでも、海外のブログよりも日本のブログ
の方がコメント数は多いという。
中にはコメントが一つの掲示板状態になっていて、
ものすごい数のコメントがつくブログが多く存在するという。

取材に基づきさまざまな実例をあげながら
述べているのと、細かいデータも呈示しているため
とてもわかりやすくネットの現状がわかる。
ネットの功罪を述べるだけではなく、
どう使いこなして行くのか、どう意識をもって
関わっていくことへの示唆があるため
ひきこまれる。



「電車男」があれだけヒットしたのは多くの人が
あれを夢物語としてではなくリアルな話として
感じ取っていたからではないだろうかとふと思う。

ネットをしている人ならすでにネットでの縁だとか
つながっている感覚、励まされている感覚など
実感していると思う。
言葉としては妙だけど、ネットの出会いというものが
すでにリアルなものなのだ。



★推薦している香山リカ氏との共著

  「ネット王子とケータイ姫 ―悲劇を防ぐための知恵」
 (香山 リカ+ 森 健:著)の感想はこちら
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10004109494.html