「図説 娼婦の歴史」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

「図説 娼婦の歴史」
ヴィオノーレ・ヴァノイエク:著
 橋口久子:訳
  3360円/1997.4.27/3200円

娼婦の歴史

売春。それは性の快楽に身を委ねて、生業とする
ことである。世界最古の職業といわれるこの商売は
古代ギリシア・ローマ世界にももちろん存在していた。
その証に、多少なりとも私情を交えて当時を描いた
文献や図画がいくつも残っている。
             <はじめに より>


売春の是非を論じたり、娼婦になった動機を
詮索する本でもない。
古代ギリシアとローマにおける売春が
どんなものであったかを図画や文献などから
読み解いていくもの。

絵画だったり、彫刻、壁画などあらゆる美術作品の
中に存在し、美しく描かれている娼婦たちが見られる。

「娼婦」のイメージは多彩である。
その時代や地域によってもものすごく変わってくる。
それだけに娼婦というのは時代を映す鏡だったりもする。
そして、女の地位の反映でもある。


ある時代では巫女であり、神聖なものが売春を
行ったり、ある地域では生まれた時から娼婦の道を
定められ、10歳やそこいらで客をとる術を学ぶ。
時代の犠牲、貧困、社会からはじかれた底辺の弱い
女たちの場合もあり、逆に自立し、解放された女で
あることもある。



身体を売ることで、つきまとう妊娠の不安。
堕落や避妊方法などもそれぞれの時代や
地域によって教えこまれてきた。
その実例も紹介されている。
あきらかに呪術めいたものもある。
そして最悪のケースである中絶方法もある。
昔の粗末な方法で命を落とすものも多かった
であろう。
まさに命がけの商売である。



自堕落な先に娼婦にいきつくものもいれば、
美しさを競い合い、芸を磨きあう魅力的な
高級娼婦もいる。
性交前に踊りを見せたり、楽器を奏でたり
する娼婦。
美しさを磨くための工夫であったり、
客を多くとるめの方法なども書かれている。

乱交パーティ、男娼についてなど様々な
性に関してのカタチが興味深い。