「フェティシズムの世界史」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

「フェティシズムの世界史」
  堀江 宏樹:著
竹書房/2007.2.26/571円


_フェティズム


古の時代、ありとあらゆる"フェチ"には名前などなかった。
なぜならそれは等しく愛という名の病であったから……。

SM、近親相姦、同性愛……彼らの行為は悪徳の栄えに
過ぎなかったのか、それとも勇気ある先駆けだったのか。
やんごとなき人々の隠された性癖から世界史を
紐解く禁断の歴史雑学本!    <裏表紙より>


これね、文庫で安いのに紙質がよくて、写真が豊富。
カラーじゃないのが残念だけど、肖像画だったり、
写真だったり、けっこう貴重な資料的図表もあって、
眺めているだけでもおもしろい本。



ほんとに古今東西、どの時代でもどの国でも
様々な「愛」のカタチがあるものだと改めて
思い知らされる。
だから、どれがきちんとした愛のカタチなのかって
本当は決められないのかもしれない。


少数派な「愛」であっても、それは当人にとっては
きちんとした「愛」のカタチなんだろうなって思う。
それに、モラルというものが、時代によって違い、
いかに曖昧かというものがわかる。


歴史ものって、いろんな説があったり、
たくさんの文献をまとめて書くから、
ただ事実を並べるだけだと小難しくつまらないものに
なってしまったり、逆にかなり主観が入ったりしがちで
真相はどうなのだと曖昧だったりするのだが、
この著者の視点はかなりユニーク。


著者はフリーライターの方で、音楽や戯曲も書かれている方みたいで
フェチのとらえ方や独特の文章センスがおもしろい。
というか、ツッコミどころを残しているとこが笑える。

中世ヨーロッパのサディズムやマゾの過激さや、
貴族たちの性への貪欲さや狂宴ぶりもすごいけど、
日本の江戸時代の人たちも負けてはいない。

浮世絵にみる「三連結」(夫婦と若衆が連なっている絵)
や今でいうホストクラブのような「陰間茶屋」の話も
おもしろい。

こんな川柳が紹介されている。

「もうでけんわいといふのに御殿させ」


これは、御殿女中に酷使された陰間の苦悩を
よんだものであるそうな。
「陰間」は女装していて、「ペニスのついた女」として、
客は男女問わなかったようだが、髭がはえると、
女性専用のホストになったという。


性の快楽だけではなく、その時代の風俗であったり、
ファッションやメイク方法も紹介されている。
その時代、国によって、「美」の価値観が全く
違っているのも興味深い。


「フェチ写真館」では、さまざまな写真が紹介
されている。
女の下着の移り変わりはもちろんあるし、
「男の下着エトセトラ」もある。


国王の不倫は公式な文化であったとされる
フランスの時代の高級娼婦の話も興味深い。
高級娼婦のはしりであった彼女は、
音楽の才もあり、料理家でもあったという。

70代の時に昔自分が産み落とした息子に求愛
されたというほどの魅力をそなえ、
80歳でも恋愛現役。


「女は恋愛で幸せになるのではない、自分を幸せに
できる力のある女だけが恋愛で幸せになれるのだと
本当に成功したフランスの女は教えてくれる
」と
あった。



なるほどなあ、恋愛しているから輝くのではなく、
輝いている女だから、恋愛できるのかもなあ。