「執深くあれ―折口信夫のエロス」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

映画24区KYOTOの俳優WSで知り合ったS嬢と
エロスについて語っていた時、
私は「家畜人ヤプー」が理想のエロスの形だと話した。

その次に逢った時、彼女はこの本を教えてくれた。
これもおもろしい一つのエロスの形なのかもと。
...

早速、購入して読んでみた本。

「執深くあれ―折口信夫のエロス」
山折 哲雄 (著) 穂積 生萩 (著)
小学館/1997.11.10/1600円
月灯りの舞
私は今なお 折口信夫にゆさぶられている。

こりこりと 乾きし音や 味もなき
  師のおん骨を 食べてたてまつる (生萩)
          <帯より>

民俗学者であり、歌人の折口信夫は同性愛者で
男の弟子しかいなかったというが、
穂積 生萩という女の弟子がいたことがわかった。

そして、折口の死後「私の折口信夫」という著書を
出し、帯に載せたように死んだ後、師の骨を食べたという。

「私の一生は折口信夫の一生なんです」
「互いに憑依したい性愛と思います」とも語る。

そんな弟子である女流歌人に宗教学者 山折 哲雄が
対談をもちかけ、共著としてこの本が生まれた。


死んだ人の骨を食べるという風習は九州地方には多いと聞く。
確か「青春の門」でもそういうシーンがあった気がする。
敬愛する人のものを我が体内にとりこみたいという願望は
さほど奇異なものとも思えず、むしろまっとうに想える。

折口とのエピソードで驚いたのは、
折口の家のトイレに入ると、生萩が書いて出した手紙が
切り揃えられてお尻ふき紙として置かれていたという。

生萩は、自分の手紙をお尻ふきに使うなんてと最初は憤慨するのだが、
“愛する人と尿がまじらうことは「いやではない」のではなく、
むしろ歓喜に近い「愉悦」であり、すすんでまじりあいたいと
思うようなねちっこい愛の人が”折口だと解る。

変態と一言では語れない数々の愛の表現などは、おもしろく、
放尿マニアにはたまらなく感じるであろうエピソードもあった。

そして、折口はホモセクシャルであると共に、
日本の民俗、芸能、師弟の伝承が血縁関係をベースにした
ものであることを否定し、純粋に他者との伝承という
視点でみていたという。

ユーモアと毒気を持ち、生萩に対しては一風変わった独特の
愛を示していたことがとれる。
秘められた歪んだ情念の世界なのか……。
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