「言葉の常備薬」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記


「言葉の常備薬」

  呉 智英:著
  双葉社/2007.6.20/514円

言葉の常備薬.

言葉の病気を防ぎます。

夜、寝る前に一章ずつ。読めば日本語の奥深さを知る
エッセイ集。
各紙誌で絶賛された「正しい日本語」シリーズ最新刊の
文庫化。           <裏表紙より>


漢字の成り立ち、敬語・外来語の使い方、
少し変わった人名・地名など、
著者独自の視点で描く「言葉」にまつわるお話。



笑いながら、ためになる本。

『つられて濁った貼り紙』のところでは
連濁(二語がくっついて一語になる時、後の語が濁音化
される)について書いている。

「本(ほん)」と「箱(はこ)」で本箱(ほんばこ)。
でも、後の語が外来語や後の語に濁音がある場合は
連濁にならない。
「室内・テニス」が「室内デニス」にはならないように。
でも、けっこう二語つなげた場合、外来語に濁点をつけて
しまう間違った言葉があるという話。


そんな実例の後に きうちかずひろの「BE-BOP-HIGHSCOOL」
の中からこんな台詞をあげている。

「ついにあの二人、ヤッちゃったのよ……。初ゼックス


そう、さすが著者だけあって漫画の引用など漫画に
関する話も多い。


『存在と無』では無音を表す「シーン」という擬音について
語っている。
この擬音は日本の漫画独特の表現であり、
「無音の擬音」というのが「無の存在」と同じくらい
論理矛盾であるという。


そして、この「シーン」の語源について語っているのも
興味深い。
どうやら「深(しん)」ではないかと推測する。
人語の絶えた静けさが感じられる言葉であると。


また、藍川由美作の「これでいいのか、にっぽんのうた」
という日本の歌曲の問題点を論じた本の中から
「案山子」の歌を取り上げている。


♪山田の中の一本足の案山子~


語源は、民俗学者 柳田国男によると案山子は悪臭を嗅がせるから
かがし」だったという。


そして、「案山子」の問題の歌詞は
一番の最後
 
「歩けないのか山田の案山子」という部分は
片脚しかない人をからかい、二番の最後
「耳が無いのか山田の案山子」というとこが
聾唖者をからかっているということて゜
放送禁止になっているのだとか。


とにかく、こんなとこにまでツッコムかという
ありとあるゆるところに、切り込む。
言葉のあるところは選ばず! って感じ。


ひたすら言葉にこだわる人にはとってもおすすめの
言葉にまつわる本。